取り組み
自然環境保全活動
外来植物対策
霧ヶ峰には、オオハンゴンソウ、セイヨウタンポポ、ハルザキヤマガラシ、ヒメジョオン類、アレチマツヨイ類をはじめとする外来植物が湿原の周囲を含む草原の各所に生育しています。
外来植物の繁茂は霧ヶ峰本来の植生を変えてしまうため、繁殖している植物を除去する対策と、新たに侵入、定着することを予防する対策との両面を講じていくことが必要です。霧ヶ峰では、関係団体や地域住民など様々な団体によって、繁茂した外来種の駆除に取り組む一方、遊歩道等の入り口に種子などを取り除くマットを敷き、新たな外来種の種子の侵入を防いでいます。この外来種駆除作業は毎年一般の参加者を募集し、年に5~6回作業を行っています。
森林化対策
霧ヶ峰の草原は、かつて採草と火入れにより形成され維持されていたものですが、本格的な採草と草原の維持管理が行われなくなって森林化が進んだ現在は、その対策となる雑木処理が不可欠となっています。
雑木は草原の景観を変えるだけでなく、高原ならではの植生をも脅かしています。霧ヶ峰においては、それぞれの地権者による独自の取り組みだけでなく、地元の諏訪市が平成 13 年から平成 30 年にかけ、一般市民や関係団体らの協力を得て雑木の伐採作業に取り組んできました。その結果、作業を行ってきた場所で雑木が目立たなくなったことから、令和元年から「草原再生作業」とし、ススキ刈り作業等を行っています。
また、霧ヶ峰の森林化を抑制し、草原を維持するための取組みとして、火入れがあります。地元の諏訪市や地権者団体などでつくる「霧ヶ峰高原草原再生火入れ事業実行委員会」は、平成 17 年から平成 25 年にかけ、火入れを復活させました。火入れは、地表を覆い日光を遮るススキなどの枯れ草を焼き払うことで、地表に日光が当たるようにし、地中に埋まっている草花の種の発芽を促し、低木の生育を妨げる狙いがあります。
令和2年度現在、霧ヶ峰で火入れは行われていませんが、草原再生作業等、霧ヶ峰の草原を維持していくための取組みが続けられています。
ニホンジカ対策
霧ヶ峰では、ニホンジカによるニッコウキスゲをはじめとする草原性の植物の被食が深刻化しています。また、平成 20 年度に実施した調査では、湿原内のニホンジカ、イノシシ等による踏み跡や被食が多く見られ、さらに湿原周辺の獣道が裸地化し土砂が流入するなど、湿原への影響も確認されました。
長野県ではこれまで、ニホンジカによる植生被害対策を講じるため、ライトセンサスによる個体群の動向と植生への影響調査、防鹿柵の設置、行動追跡調査(テレメトリー調査)等に取り組んでいます。
ライトセンサス
シカの個体数変動を調査するため、夜間、車で走りながら周囲をライトで照らして、反射するシカの目の光で個体数をカウントします。
霧ヶ峰自然保護センターでは長野県環境保全研究所と協働で、霧ヶ峰パークボランティアの協力のもと、毎年春と秋に調査を行っています。
防鹿柵の設置
平成 21 年にイモリ沢に電気柵を設置して以降、毎年霧ヶ峰自然環境保全協議会構成団体が霧ヶ峰の各場所に電気柵を設置しています。(イモリ沢は平成 22 年まで。令和2年度は、車山肩周辺、車山高原、富士見台、霧ヶ峰自然保護センター周辺に設置。)その結果、電気柵設置場所においては、ニッコウキスゲを始めとする植物の開花が見られ、二ホンジカの食害を防止する効果が確認されています。
また、平成 22 年、23 年には、ニホンジカの侵入を防ぐ目的で、八島ヶ原湿原の周囲を鉄製の柵で囲む作業を、霧ヶ峰自然環境保全協議会と、一般のボランティアとで行いました。以降はボランティア等による柵の点検を継続しています。
情報提供:霧ヶ峰自然環境保全協議会